願う事は逃げですか?









願う事は卑怯ですか?










今の俺は "Yes"も"No"も 答えられない――――


















願う君に花を咲かせと








ガチャッ・・・。



誰もいない放送室に入る。


そして、朝の放送をするためマイクのスイッチを入れる。


「皆さんおはようございます。今日は2月14日、聖バレンタインデーです。

 さて。本日開催、『椎名翼争奪戦』に参加なさる方は、開催人まで―――――」



「って何変な放送流してんの!」



血相変えて放送室に飛び込んできたのは、今や飛葉中のプリンセスと化した椎名翼だった。



「何って、翼争奪戦に参加する人の登録でしょ?」

「登録って・・・ふざけんなよ?」

「ふざけてなんて無いよ?ただ、今回は違うやり方でやろっかな〜って。」



翼は溜息をつく。



「違うやり方って・・・。休み時間から部活の時間から朝の自習の時間まで追いかけるのと違うって事?」

「そうそう。今回は・・・。」



そう言いかけると、再びマイクのスイッチを入れ、



「今回は、ラウンド別勝ち抜け方式でやっていきたいと思いますー。」

「・・・は?」



翼の突拍子な声が響く。



「ラウンド別、勝ち抜け方式ぃ?」



がマイクのスイッチを切って言った。



「そう。サバイバルみたいで、楽しいでしょうv?(にっこり」



・・・玲を見てるようだ。いつからは玲になったんだ?


翼は本気でそう思った。



カチッと言う音が聞こえ、がまたマイクに向かって喋る。



「それでは、開催時は放課後で。場所はグラウンドです。皆さん、締め切りは昼休みまでですからお早めに〜。」



そう言って、本当にスイッチを切る。



「・・・ところで、翼なんで放送室入って来たのよ?」

「え?そんなの決まってるだろ?の放送が聞こえたからだよ。」

「それにしても3階から2階までを3秒で?ありえないでしょ。」



翼が顔を逸らした。



ははーん・・・。さては待ち伏せしてたな?



「翼ちゃんv悪いんだけど、私受付に行かなきゃ行けないんだvって言っても教室に行くだけなんだけどね?

 翼とは学年違うから、一緒に行けないの。ゴメンねー?待っててくれたのにv」



極上の笑顔で言う


それとともに赤面していく翼。



「なっ・・・!ま、待ってなんか無いよ!年下の癖になに言ってんだか!

 ただ聞こえたから飛んできただけ!行くなら行けば?俺は関係ないしね!」



翼が放送室から荒々しく出て行く。



「・・・図星つかれたからって捻くれなくてもねぇ。」



は1人、放送室の中で笑っていた。




























のクラス(2−3)




さん!3年2組の川上奈々、出場するわ!」

「ハ〜イ、川上先輩ですね。じゃあ、次の人。」

「えっと、1年5組の長崎遥です。出場させてください。」

「はいはい、長崎さんねー。次々、どんどん参れ〜。」



先ほどからこんなやり取りがずっと続いている。


朝の自習の時や授業の合間などに、全学年がのクラスにやってくる。



もよくやるな・・。」

「あぁ、本当に。」



同じクラスの政輝と六助が呟く。



「ん?あぁ、商売ですからv」



が笑顔で返してくる。



「・・・放課後は大変だろうけど、頑張れよ、翼・・・。」

「同感・・・。」



政輝と六助は、翼に冥福を捧げていた。


























勝負の放課後




今、の開催宣言で、サバイバルが始まろうとしている。



「さぁ、総数419人のサバイバル、『椎名翼争奪戦』、ここにて開催〜!!」


「「「「「「お〜!!!」」」」」」


「ここにいる賞品をゲットするぞー!!」


「「「「「「お〜!!!」」」」」」


「・・・ねぇ、。コレはないんじゃない?」

「ん?何で?翼逃げるでしょ?だから縛るの。」



翼は、逃げないよう縄で椅子に縛り付けられている。



「・・・それにしても、何でこんなにいるのさ。」

「知らないよ。受け付けたら400人以上もいたんだからさ。」


殆ど全校女子の参加に、翼だけでなく、当事者であるも驚いている。



「さぁ、まずは1ラウンド目!お題は・・・!『椎名を10分以内に捕まえる』!」


「「「「「「え〜!!?」」」」」」


「生き残り枠は無制限!グループで見つければ、そのグループ全員生き残りです!

 まぁ、もし誰も見つけられなかったら終わりですがね。さぁ、みなさん位置について下さい!」



女子達は、渋々ながらもスタートラインに向かっていく。



「翼。翼は、部室の辺りから逃げてってね。捕まんないように!」



はウインクして翼に言う。



「グッドラック!」



話が矛盾してる・・・。


翼は本気で思う。


俺を捕まえさせたいんじゃないのか?なのに今度は俺の応援?



「・・・気にするな。気にしたら終わりだ。アイツはそう言う奴なんだ。」




頭に渦巻く思想を、顔を叩いて跳ね飛ばし、翼は走り出した。



「それでは。位置について・・・。よーい、スタート!」



いっせいに女子達が走り出す。


その威勢に少しならず退く


だが、翼を捜しながらも走り続ける彼女達の目は真剣だ。



「お〜お〜。恋する乙女はやっぱり違うねぇ。」



1人、本部席でにやけている



「おい・・・。いつまでやらせる気なんだ?」

「おや政輝。さぁ?まぁ、一応3ラウンド目までを予定してるけど。」

「それでも生き残ったら?」

「いや、ありえないでしょ。全員落ちるって。だって3ラウンド目は・・・。」



はそこで言葉を止めた。



「3ラウンド目は?」

「・・・やっぱ何でもない。」

「は?言えよ、そこまでいったんなら。」

「いいの。言わないから。・・・お。早くも3分経過。」



が時計を見て言う。



「・・・はぁ。分かったもういい。取り合えず、早くウチの大将返してくれよ。」

「ラジャー。」



政輝はサッカー部のところに戻っていく。



「・・・何せ3ラウンド目は・・・。」



『椎名に愛を詰めたチョコを手渡しする』だもんねぇ・・・。



が途方にくれている間に、もう9分経過していた。



「おわ!ラスト1分!?・・・さてさて、翼は?」



捕まえた時用の椅子に、翼を座らせている人はいない。



「・・・やっぱりここでアウトかな?」



がそう呟いた瞬間。



さん!!椎名君捕まえたわ!!」



10人くらいのグループが、翼を捕らえていた。



「お〜。捕まえたの。・・・じゃあ。ターイムアーップ!!」



の声が響く。



「1ラウンド目の通過者は、1年加倉井さん、田中さん、仁井田さん、2年相場さん、幹さん、藤枝さん、渡邊さん、

 3年楠さん、木村さん、佐藤さん、飯村さんの11人です!」


「きゃー!やった!バスケ部勝利!!」



この団体さんはバスケ部だったらしい。



「それでは、この11人だけ、2ラウンドに出場する事ができます。

 他の皆様は、チョコレートを直接渡す事はできませんが、

 開催人である私の席の上に置いてある箱の中にチョコを入れてくだされば、お渡ししますのでお入れくださいね。」



翼は椅子に座っていた。


めちゃくちゃ不機嫌そうな顔で。



「・・・どうしたんですか?椎名先輩。」

「急に後輩ぶるなっての・・・。ラスト1分ってところで捕まった・・・。苦労して逃げたのに・・・。」

「あは。運の尽きだね。」



二人は少し会話した後、翼は賞品席に、は本部席に席を移した。
























「え〜、2ラウンド目の結果は、全員不合格・・・と言う事ですので、ここで閉会です。

 惜しくも落ちてしまった11人の皆さんは、箱の中にチョコをお願いしますねv」

「え〜?だって、400人以上いる中で私達だけ残ったのに直接渡させてくれないの〜?」

「でも落ちましたよねv?(にっこり」

「「「「「「・・・・llll」」」」」」



の黒い笑みが炸裂する。


女子達は、反抗を止めて大人しく箱に入れた。


翼は、が箱にチョコを入れないのを見てため息をついた。



「で、結局当人は入れないわけね・・・。今年も駄目かな。」



翼がそう呟いた瞬間。



「あぁ、そうだそうだ。翼ー!!」



の声が翼に届く。



「・・・何?」

「これこれ!渡しとこうと思って!」



がバックを漁る。


・・・まさか。



「はい!ハッピーバレンタインv」



翼の予想は的中して、は満面の笑みでチョコを渡してきた。



「・・・あぁ、ありがとう。」



思わず赤面してしまう翼。



「じゃあ、そろそろ部活行こうか!玲さんも怒――――」

「ねぇ、これって義理?」



のセリフを遮って翼が言う。



「・・・は?」

「だから、このチョコって義理なの?って聞いてるの。」



翼がに迫る。

は少しならず冷汗をかいている。



「あ〜・・・その、えっと。」

「何?言えないの?やっぱり義理だった?」



が下を向いて言った。



「・・・義理だって言ったら?」



翼がの顔を覗き込んで言う。



「ありえないでしょ?」

「・・・その自信は一体どこから来るんでしょうねー?」



は少し赤くなっ顔を上げた。



「で?本当の所どうなの?」

「・・・ほ、本命だよ・・・。」

「そう。じゃあ、何か言う事あるんじゃない?」



は更に顔を赤くした。



「あ・・・えっと。じ、じゃあ、・・・・チョコ食べてね!」

「あら・・・。違うでしょ。ほら、バレンタインなんだから。」



が溜息をついた後、喋りだした。



「好きです・・・って言えば言い訳?///」



の顔は真っ赤だ。


翼は少し驚いた顔をしたが、すぐ笑顔になった。



「合格v俺も好きだよ、v」

「嬉しい・・・私ね、翼と恋人になれるようにって願ってたんだよ!」

「・・・なんでそう可愛い事を素で言ってくれるのかな。」














ほら 願えば手に入る



そう 願わなければ何もはじまらない








願う事は逃げじゃない





願う事は卑怯じゃない








目標ができて 挑戦が始まる





挑戦が始まれば苦難もある





でも 苦難の先にある幸福を手に入れたいから





人は願うんだ







願いをもつ人は皆主役






願いのない人なんていない








そう だから僕も願う

















願う君に花を咲かせと――――――





















〜〜〜〜〜〜 あとがき 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

バレンタインフリー夢・翼夢です。

やぁ、長いですね・・・。長々とすみません。

貰いたい人がいれば貰ってって下さい・・・。

掲示板に「貰ってやったぜこの野郎」みたいに書いてくれればいいんで・・・。


それでは。他の小説もどうぞご覧あれ。


2/14 小坂井瑞希




[Thank you アトガキ]

小坂井瑞希様のサイトでフリーだったので盗みを働いてきました。笑
赤くなる翼が可愛いですよー!!
私赤くなるような可愛い翼あんまり書けないんで…。

やっぱり、詩が良いっスね☆
かっこいいって言うのか、素敵です!!


060219 家長碧華