小さい頃から思い描いてきた俺の夢。

今その夢が現実になろうとしている。




―――同時に終わりを警告している。






























「翼、まだ練習するの?」

「当たり前だろ、休んでいた分取り戻さないと」

「でもせっかくよくなったのにまた・・・・・・」

「それ以上言わないでくれる?練習の邪魔だから出てってよ」

「・・・・・・わかった」

一瞬悲しそうな顔を見せたが、すぐにグラウンドを去っていく

胸が痛んだ。

ごめんな、こうでもしないと俺は甘えてしまうから。

















いつだったろう、TVでサッカーを見て子供ながら妙に興奮した。

いつか俺も同じステージに立つんだとがむしゃらに練習してきた。

結果、体を壊すこともしばしばあったが、何とかもう1度プレーできるまでに回復させてきた。






とは高校からの付き合い。

ダラダラという言い方はよくないが、特に問題なくここまできた。

でも今の2人が曖昧と言えば曖昧かもしれない。

流れで同棲しているが、その先のことを考えてはいない。

いや、俺は時々考えたこともあるがに言えないでいる。

も思い通りの仕事に就き今が一番ベストだろう。

そんな時に俺のせいで縛りたくないというのもある。


















「・・・・・・っ!」

ダッシュをした直後、膝に激痛が走りその場にうずくまる。

まるで体の中から足を引きちぎられるような痛さだ。

「オイ翼!?」

先に帰ろうとする柾輝がグラウンドの俺の異変に気付き、駆け寄ってきた。

追い払おうとしたが、今までに感じたことない位の痛みで何も言えず病院にまで付き添ってもらった。














「・・・・・・翼」

「オウ」

「どうだった?」

「・・・・・・おごるからちょっと話そうぜ」

何かを悟ったのか柾輝は無言で俺の後をついて来た。





向かったのは病院の屋上。

入院した時もここに入り浸っていた。




「翼」

「・・・・・・に言うなよ」

「・・・先に言われたか」

「先に釘打っとかないとね」

「わかったよ。でもうすうす気付いてるとは思うぜ」

「そん時はそん時だよ」

「で、医者はなんて?」









「なあ柾輝、奇跡ってやつ見たくない?」








































「ついにこの日が来ましたね」

「ええ、日本の名が世界のトップにたつかもしれません。運命のホイッスル、スタートです!!」






「椎名!!」

「柾輝!」

「若菜!」

試合開始早々、俺達は攻めに行く。

攻められたら攻め返す、お互いにそんなゲームが続く。





前半0−0で終わる。

「椎名、今日調子悪いのか?」

「何で」

「いつもより動きが悪い気がするし、無意識に膝を・・・・・・」

「悪い、渋沢。それ以上は言わないでくれる?」

「・・・・・・わかった」

ふうっとタオルで汗を拭いながらため息をつき、スタンドを見渡す。

―――――いない、か。

「探してんのか?」

「柾輝」

「・・・待ってるだけじゃどうにもならないこともあるぜ」

「・・・・・・うるせー」

「膝、大丈夫なのか」

「なんとかね。もちこたえてみせるさ」

「無理すんなっても無駄だよな」

「わかってるじゃん、当たり前だろ。ここで諦められるわけがない」




『後半開始します』





後半が進むにつれて声援も大きくなる。

この空の下無数の声が深く、熱く体に刻みこまれパワーとなる。

でも1つ足りないんだ。



俺の前にボールが流れてきた。

ここで取らないと一向に進めない、だから全速力でボールに向かう。

突如、俺の体はグラウンドに沈む。

何がどうなったのか理解できなかった。

呆然としていた俺に皆が集まってくる。

「翼!?」

「どうしたんだよ椎名!」

「翼さん!?」

試合は一時中断し、コーチ、監督も出てきてその場で判断が下される。

「この足では無理だ!!よくここまでやっていたもんだ」

「いつから・・・・・・?」

「俺は続けるよ。さっさとケリつけよう」

「今無茶したら一生後悔するかもしれないぞ!?」

「後悔?今諦めれば俺はずっと後悔するよ」

「翼・・・・・・」

さすがの柾輝も俺を止めようとしているのが読み取れた。

「オイ翼」

「何だよ柾輝、止めようたって無駄だぜ?」

柾輝が指さす方を見れば、スタンドの最前列で心配そうに俺を見るがいた。

目が合った、その一瞬だけ時が止まったようだった。

俺は重い体を起こし、ゆっくりとの所へ行く。






静まり返るスタジアム、話すのには丁度いい。




「来てたんだ」

「前に大事な試合だって言ってたから・・・・・・」

「ごめんね」

「え・・・・・・?」

「この試合終わったらハッキリさせるから。だから見ていてくれる?」

「翼・・・・・?」

「勝利のおまじない、もらっていい?」

「おなじない・・・・・・っ!?」

を強引に引き、キスをする。

同時にスタンドには悲鳴とともに先程までの熱気と活気が戻る。

「後でね」

「つ、翼!!待ってる、待ってるから!!」






の想いを背負い、再びグラウンドに戻る。

「椎名・・・・・・」

「何て顔してんの。ホラ試合再開だよ」

への想い、からの想いが俺を奮い立たせてくれる。

限りなんてない、いつかゴールにたどり着けるんだ。

何度つまづいたとしても俺は負けない。

































誰もいなくなったグラウンドに立つ。

目を閉じれば先程までの試合が鮮明に思い出される。

結果、日本は1−2で負けた。

でも誰もが後悔などという顔をしていなかった。

俺だって。




意を決してグラウンドを横切り、スタンドへ。

そこにはが俺が来るのを待っていた。






「お疲れ様」

「ああ」

「膝、大丈夫?」

「しばらくまた病院通いじゃない?」

「そう」

「そんな俺だけどついてこれる?」

「へ・・・?」

「勝気で負けず嫌いでおかげで怪我までしてるけど、を想う気持ちは誰にも負けない」

「翼・・・・・・?」

「ずっと側にいてほしい・・・・・・・『椎名』にならない?」

「やだ・・・・・・何でそんな偉そうなのよ」

「本当は嬉しいくせに」

「っ・・・バカ翼!!遅いよ・・・・・・もう私のこと好きじゃないのかと思ってた・・・・・・」

「そんな訳ないじゃん。今までもこれからもだけだよ」














次の日、TVや新聞では昨日の話題が多く取り上げられていた。

そして俺は治療と海外進出を兼ねて飛び立つ。

まあ、気付いた頃には俺は日本にいないってこと。

もちろんも一緒にね。











song by 光永亮太

song is far away







碧華さまからのリクエスト光永亮太『far away』です。

聞いた事はないのですが、応援歌というか勇気の出てきそうな曲に思いました。

未来設定となると何だかいつもの同じパターン落ちになるのは気のせいではないような・・・・・・

もっと精進せねば!!

ハッピーエンド=結婚に結び付けたい訳ではないんですよー!!(一応)



碧華さま、いかがでしょうか?

リクエストありがとうございました。

これからもよろしくお願いいたします。



==感謝==
ありがとうございます!!
期待通りのDreamですよ。
いやー・・・かっこいいです♪
本当にありがとうございました!

 家長碧華