イトコと彼と理想の家族





「あら、翼クン。いらっしゃい。なら多分部屋にいるわ」


俺はおばさんにお礼を言い二階のの部屋へ向かった。


ー・・・」


ドアも開けてもの姿は無い。 かわりに隣の誰の部屋でも無い部屋からの声が聞こえた。 小さい子を相手にするような話し言葉だ。


「明日香は何処かなぁー?」
何やってんの?」


押入れに顔を突っ込み何かを探している。


「あ、翼!今イトコ来てて。隠れん坊中」


すると押入れからひょっこり顔を出している女の子がいた。 初めて見る俺に警戒しているようだった。


「明日香ー」


に名前を呼ばれ一気に顔が笑顔になった


「おいで」


トコトコとに近づき俺から隠れるようにの左腕を掴んでいる。


「人見知りが酷くて。慣れるまで黙ったままなの。明日香ー翼兄ちゃんだよ?」
「初めまして、翼だよ。よろしくな」


俺も二人と同じ目線になった。 けど俺は嫌われてるみたいで、の後ろに隠れてしまった。 そして「チャンのお部屋行こう?」とをひっぱる。


「良いけど、翼兄ちゃんも行きたいってよ?」


子供だから表情が顔に出やすい かなりいろいろ考えているようだ。


「いいよ」


ボソッとだったが確かに聞こえた。


「良いって♪ほら、行こうか!」



の部屋に来て俺は初めてつまんないと思った。 そりゃね 4歳の子供にマシンガン喰らわせるつもりはないよ。 けど ・・・はぁ。


「翼?何ため息ついてんの」
「こんな小さい女の子とどう遊べば良いかわかんないし。つまんないんだよね」
「明日香もねー・・・翼と遊びたいと思ってるよ、きっと。私もう疲れたー。翼交代!」


ほら 明日香が俺を凄い見てるんだけど。


「翼から声掛けるの!そんなんじゃ将来良い父親にはなれないわね」


子供好きのがいれば大丈夫だろ 何て考えてる暇は無い。


「明日香ー。これ、あげる」


そういってが優しくなげたのはキャンディーボール。


「あ、翼。明日香は蹴るじゃなくて投げる専門だから。ハンマー投げみたいに投げるからキャッチするの大変よ」


明日香は既に投げる体制になっていて、 あのアテネ五輪ハンマー投げの金メダリストもびっくりすんじゃないかってくらい フォームがハンマー投げそっくりだった。 の言ってた通りどこに来るかわからないピンクのキャンディーボール。 俺の方に来る事もあれば、真上に上がったり、顔面に来たりと、ヒヤヒヤものだった。 いつの間にか俺も明日香も白熱してて、汗びっしょりだ。


「翼兄ちゃん早く立って!」


そして俺のことを『翼兄ちゃん』と呼んでくれている。 かなりの進歩だ あんなに嫌がられていたのに。


「お前汗びっしょりだよ。風邪引く」
ちゃん。脱ぐ」
「はいよー。本当に汗びっしょりだ。翼兄ちゃんと遊んで楽しい?」
「うん!楽しい!!」


その言葉で俺と明日香は再び白熱することになる



「明日香ちゃーん!お母さん来たわよー!」


下でのおばさんが呼んでる。 とうとうお迎えが来たらしい もう18時を回ってる。


「ほら、行かないと。とりあえず、下に行こうか」


明日香は右手で俺の手を、左手での手をしっかり握って下へ降りていった。


「あら、翼クンにも慣れたのね」
「ごめんね、。彼氏クンが来てたのに明日香のお守りさせちゃって」
「全然良いよ、おばさん。楽しかったし。またおいで、明日香」



「明日香、チャンと翼兄ちゃんと寝る!」


おいでのコールから今までずっと黙ったままムスッとしてて、母親の前で言ったのが『泊まる宣言』


「ちょ、明日香。何言ってんの。帰るよ」


無言で俺の手をぎゅっと握り締める。 きっとの手も握り締められてるんだろうな、何て思いながら明日香を見た。 は笑って明日香と目線を合わせていた。


「うちは良いわよ?明日香ちゃんも翼クンも泊まっていっても。でも、翼クンの親が・・・」
「俺も良いですよ、別に。と居るって言ったら親も何も言わないと思いますよ」



結局俺らは家に泊まることになった。 和室に布団を二枚敷いてもらい3人で寝る事に。 どうしても3人で寝たい、真ん中で寝たいと言い張るチビッコがいるのだ。


「明日香ー寝るよー。ほら、真ん中が良いんでしょ?」


コクンと頷き真ん中で横になるチビッコ。


の隣で寝たいなぁー」
「ダメ!チャンの隣は明日香だもん!」


2秒もしないうちに明日香に怒られた。 隣の隣でが笑ってる。 まぁ、こんな夜も良いんじゃない?




==あとがき==
桜木英子様に捧げます。
遅れちゃってごめんなさい!!
そして、好き勝手やってごめんなさい・・・。笑
イトコのモデルは私のイトコです。もろ性格そのまんま使わさせて頂きました。
はい、ハンマー投げやります。笑。怖いです。
翼兄ちゃん呼ばれたらどんな反応するんだろうなー・・・。
幼稚園児を相手する翼が書きたかっただけです。

05/12/27   家長碧華