オレの彼女はクッションに囲まれて寝るのがすきだ。だから、のベッドの上にはいつもたくさんのクッションがある。床に落ちているときだってある。落ちてる確率はほぼ100%。
落ちるほどクッションで溢れてるってことだ。昨日、の部屋に行ったときも落ちていた気がする。そして、いつの間にかクッションは増えていて、止まることを知らない。
「修悟の部屋ってクッション少ない・・・寝れない」
「オレはなくてもいいんだよ。つーか寝るなよ」
今日はオレの部屋に来ていて、が「いつも思ってたんだけど」と続けていった。オレはクッションがたくさんなくたって寝れる。クッションなんていらない。枕一つで充分だろ。
が言うには、包まれている感じになれるからクッションがいっぱいほしい、らしい。
「新しいクッション欲しいなあ」
「まだいるのかよ?」
オレの部屋にある唯一のクッション(寝るとき使ってる枕だけど)を意味もなく叩いている。中に入っているビーズがシャカシャカと音を立てて、うるさい。
「修悟のベッドに置く。修悟のベッドもクッションでいっぱいにする」
「オレの部屋も!?」
「そう。修悟の部屋に来てクッションがいっぱいあったら安心するじゃん」
ゴロンとベッドに横になる。おい、寝んのかよ!!仮にもオレの部屋だぞ!彼氏の部屋だぞ!!はいつも危機感というものが足りない。オレがなにもしないという保障はどこにもないのに、はいつも無防備だ。
「・・・寝れない」
「寝んなよ・・・」
ちょい、ちょいと手招きされてベッドの横に立つ。それでも手招きは続いてて、なに?とベッドに手をつき腰を折って距離を縮める。
これ以上近づいたらやばいのに、止めをさす一言をは紡いだ。
「修悟も寝よ」
ボソッと誰もいないのに、ボソッと呟く。・・・オレに頑張れって言いたいのかよ!!
「ねえ、ぎゅーってさせて」
「は?オレが抱きつかれんの?」
「そう、私が抱きつくの」
「やだ。オレが抱きしめる」
「えー・・・」
「じゃ、オレは寝ない」
「ソレはだめー。・・・仕方ないなあ」
オレがベッドに横になると、嬉しそうに笑う。はあー気ぃ抜ける。そういうムードはない。まあ、今はソレがオレには好都合で嬉しいんだけど。の望み通りギュッと抱きしめてやる。
擦り寄ってきて、シャンプーの匂いがフワッと香る。いつものの匂い。
「・・・やっぱり修悟の部屋にクッションいらないや」
「なんで?」
「修悟がいるから」
オレがクッションってことか?・・・やべーな。すっげー嬉しい。きっとニヤケてんだろうなーと思い、顔を見られないように抱きしめた。
今何時だろうとふと思う。寝返り打てねえから、時計が見えねえや。母さん来ねえよな。・・・まあ、やましいことしてるわけじゃないし見られてもいいか。母さんもとのこと知ってるし。
もうすでに眠っている愛しい彼女の温もりでオレも眠くなってきて、目を閉じた。
居眠り逃避行
(こういう休日もありかもな)
081213 家長碧華(拍手だったものをアレンジ)
タイトル提供:BIRDMAN