昼近くの生放送に出演するためスタジオに来ている。
サポーター主義なあいつ
W杯Yearということもありスポーツ番組では引っ張りだこだ。
インタビューはどの番組も同じ内容で嫌気が差してくる。
しかし、今日は初のバラエティ番組。
「どうですか?周りが続々と結婚していますが」
「そうですね。やっぱり考えますよね」
「でも、歳はまだまだ若いですから」
「そんなことないですよ。サッカー選手は早く結婚した方が良いと言いますし」
「好きな食べ物は?」
「好き嫌いはないですけど、ジェラートは好きですね」
「聞きましたかー?椎名選手にはジェラートを持って行きましょうー!」
サッカーばかりの質問ではなく退屈な思いをせずにサッカーのコーナーが終わった。
「この後も椎名選手にお付き合い頂きます」
「お疲れ様でしたー!」
「ありがとうございました」
難なく終わった1時間番組。
周りのスタッフがペコペコと頭を下げる中、すぐに俺は引き上げた。
「これでサッカーに集中出来るんだよね?」
「そう。もう出演オファーは来てないからね。翼の事だからいつオファー来るかもわからないけどね」
「違うやつ呼べばいいのにな。俺だってまだW杯のメンバーに決まったわけじゃないし。まぁ、落ちるなんて考えた事もないけど」
気心知れたマネージャーに愚痴りながらクラブハウスへ向かう。
ふと携帯を取り出して見るとメールが一通届いていた。
「あ、からだ」
「テレビ見たって?」
「うん」
[テレビ見たよ。お疲れ様。生放送も余裕ねー。少しは焦ってよ]
実は昨日と籍を入れた。
まだ報道陣に記者会見をしていないので、さっきは[考えます]とだけ答えた。
[サンキュ。クラブハウス寄って帰るから]
送信しました。の文字を確認してから携帯をポケットへしまう。
「もう結婚してます。て答えるかと思ったよ」
「俺もそうしようかと思った。けど、が嫌がるだろうしね」
あっという間に見慣れた建物が見えてきた。
まだ練習中らしくサポーターが日の照っている中座っている。
車が入ると皆の視線がその車へ移る。
椎名翼だとわかると暑さを忘れたようにはしゃぎ出す女性サポーターたち。
翼の人気がその光景だけで伺える。
動きたくてウズウズしている体の要求に応えるように着替えて練習場へ。
ウォーミングアップにと練習場を軽くジョギング。
サポーターのすぐ前を何度も通り過ぎる。
その度に携帯のカメラのシャッター音がする。
今日は人多いなぁ。と心の中で思うだけで、もう慣れてしまったシャッター音。
練習は殆ど終わっていて、翼が参加出来たのは僅か10分。
まだ体が満足していない、一人残って練習をしたい。
自分のサインが欲しくて来てくれた人には悪いが、かなり居残り練習をしていた。
全体練習が終わって何分、何時間過ぎたのか 時間もわからない。
やっと満足した体をピッチに横たわらせる。
くすくすと女性の笑い声が聞える。
たくさんいるなぁ。と思って居た所に一人だけ残っている人の笑い声だ。
「…じゃん。いつから居た訳?」
「全体練習が終わる直前から」
「全然気付かなかった」
「集中してたもんね」
「すぐ支度してくるから。ここで待ってる?」
「うん」
特別扱いが嫌いなはクラブハウスに入ろうとしない。
一サポーターでありたいというの主義だ。
しかし、ポロポーズを受けてくれたのだから、クラブハウスには入って欲しい、というのが翼の本音だ。
「おまたせ。帰るよ」
「ん。ねぇ、翼?明日記者会見だっけ?」
「そうだけど?」
「明日から世間的には椎名なのね、私。堂々と言えるわ」
「俺ははもう椎名がと堂々と言えるけどね」
[あとがき]
野球のT・Yサンが結婚したということで、便乗して書きました。笑
ただインタビューが書きたかっただけなんですけどね。
そして、凄くサポーター想いの翼に仕上がりました。笑
私敵には翼は「さえ居ればサポーターなんかいらない」という現実に居たら酷い選手なんですけど。笑
今回は穏やかな翼でお送りいたしました!
家長碧華
[椎名翼選手の記者会見の模様をお伝え致します]
「何の記者会見なのでしょうか?」
「結婚記者会見、ですね」
「そうなんですか!?いつポロポーズしたんですか?」
「はい。一昨日です」
「何処で何と言ったんですか?」
「家で。普通に結婚してくださいと」
「お相手の女性はどんな方ですか?」
「僕の理想の女性です」
「なぁ、翼?プロポーズ違うだろ?」
「え?あぁ、良いんだよ。の他に何て言いたくないしね」
[俺のサポーターを辞めて、妻になってください]