部活を終え周りはとうに暗くなった帰り道。いつも通り岩ちゃんと歩いていると、数百メートル先に見知った人物を発見した。
発見したのだが、そいつは一人じゃなかった。
「えっ!?飛雄が女の子と歩いてるっ!?」
中学校が同じだったこともあり、見かけることはたまにあったが、向こうが気付かない限り話しかけはしなかった。
しかし、今日は別だ。びっくりして大きな声を出してしまい、近所迷惑だと岩ちゃんに殴られるし、飛雄は気付いて近寄ってくるし散々だ。
「岩泉さん、及川さん、ちわっす」
「おー。部活帰りか?」
「ハイ」
「そんなことはどうでもいいんだよ!何で飛雄が女の子と歩いてるの!?」
それも、結構可愛い系の女の子と歩いているなんて信じられない。及川さんは岩ちゃんと歩いてるっていうのに。
何でと聞かれ飛雄が横に立つ女の子を見ると、その女の子も飛雄を見つめる。
数秒だけど、そんな見つめなくたってすぐ答えられるものではないのか?友達やクラスメイトだろう?彼女という返答はないはずだ。
「彼女です」
「・・・・・・え?何だって?」
「及川さん、耳遠くなったんですか?」
「遠くなってないよ!ちゃんと聞こえてるよ!彼女だって!?」
「です」
軽く頭を下げ、ちゃんは自己紹介をしてくれた。飛雄と何故一緒にいるのかわらかないくらい、きっとしっかりした子に違いない。
つられたように岩ちゃんも自己紹介しているし、岩ちゃんに笑いかける笑顔がとても可愛らしい。
「先輩達の事は良く知っています。私も北一出身なので」
「そうなんだ。え、いつから付き合ってるの?」
「高校入ってすぐぐらいですかね」
もう付き合って半年は経っているということになる。
あのバレー馬鹿な飛雄に彼女がいたことに衝撃を受けたが、すでに半年経っていたということにも衝撃を受けた。
こんな愛想のない奴のどこが好きなのか。バレー馬鹿の何が良いのか。一緒に居て疲れないのか。
聞きたいことはたくさんあったが、女の子にそんなにたくさんの質問を投げかけるのはダメなことぐらい知っている。
とりあえず、落ち着いて、少しだけ聞いてみよう深呼吸をした。
「ちゃん制服じゃないけど、高校はどこなの?」
「私も烏野です」
スキニーパンツが足の細さを強調し、Tシャツから伸びた白くて細い腕が印象的だった。
俺たち3人といるから小さく見えるが、そんなに小さくはない気がする。
「どっちから告白したの?」
「及川うぜーぞ。そんなこと後輩に聞くな」
「だって、気になるんだもん!岩ちゃんだって知りたいでしょ?」
「知りたかねーよ。ほら、夜遅くに騒ぐな。うるせぇ。帰るぞ」
まだ全然聞きたい事も聞けていないのにジャージを引っ張られて飛雄との会話を強制終了させられそうになったが、最後に一つだけ聞きたいことがあった。
飛雄にはまぁ、どこかで会うことはあるだろうが、ちゃんに会うことはないかもしれない。
岩ちゃんにストップを求めると険しい顔でこちらを見て、しぶしぶ止まってくれた。
「飛雄のどこが好きなの?」
岩ちゃんをちらりと見ると、やっぱり怖い顔をして今にも殴りかかってきそうだったのをなだめちゃんからの返事を待った。
これだけは聞いておきたい。聞かなきゃきっと眠れない。
ちゃんは悩みながら飛雄の顔を見つめている。うん、やっぱり悩むんだ。飛雄の好きな所がないから悩むんだね。そうに違いない。
「うーん・・・全部好きです」
照れ笑いしながら、そんな信じられない答えが返ってきて、意味もなく岩ちゃんを見つめてしまった。
きっと飛雄の好きな所が見付けられないから、とりあえず全部って答えておこうってことかな?うん、そう思わないと腑に落ちない。
こんな可愛い子が飛雄の彼女なんてやっぱり信じられない。
「俺、飛雄の良い所一つも知らないんだけど」
「飛雄の良い所は私が知っているので大丈夫です」
「え、何それ・・・!」
「もういいだろ、及川。お前らも気を付けて帰れよ」
「うす」
上手い具合にかわされてしまった。ちゃんが知っている飛雄の良い所が気になってきた。
ずっと黙って立っていた飛雄が終始ちゃんの返答が気になるのかソワソワしているのは気に食わなかったが、
きっと飛雄から告白したのだろうと予想が出来た。
あのバレー馬鹿がバレーの事以外であんなにソワソワした顔を見せたのは初めてだ。よっぽどちゃんの事が好きなのだろう。
「岩ちゃん」
「あ?」
「俺も彼女欲しい」
「別れたばっかだろ。てか、お前自分で歩けや」
殆ど岩ちゃんに引きずられるように歩きながら帰った。
布団に入ってもなかなか寝付けず、次の日の朝練で岩ちゃんに怒られるのをわかっていながらも、バレーのDVDを見て気を紛らわす事にした。
解かないままの証明
15/11/23 家長碧華
タイトル提供:てぃんがぁら