外が少しずつ暗くなってきたころ、流石に部員からは疲労の色が出てきている。
間に休憩は挟むものの、朝から夜まで動きっぱなしはやっぱりキツイ。
ゲーム形式だからと少しは楽かと思ったが、負けた方に課されるペナルティがキツかった。
「ー、そろそろ飯の準備頼む」
「了解です」
合宿中の晩飯はマネージャーのが部員全員分を食堂で作ることになっていて、練習が終わり次第部員も手伝うのがお決まりだ。
全員分の飯を作るのに大体2時間位掛かるから、コーチが逆算してに準備の指示をするのだ。
誰かが「腹減ったー」と呟くと、それに同意する声が次々と上がる。
「初日は定番のカレーだからね。美味しいの作ってくるから、皆、頑張って!」
のその一言で、全員のやる気と様々な歓声が上がる。調子の良い奴らばかりだ。
それからの紅白戦は、それぞれ好プレーが出たりと中々良い試合が続いた。カレー効果か?
2時間を少し過ぎたころ、終了となり、ボール等全て片付け終えると食堂へと向かう。食堂に近付くにつれ、良い匂いがしてきた。
「練習終わったぞ。、何か手伝うことあるか?」
「ちょうど全部出来たところだよ。後は盛るだけ。あ、そこのサラダは皆に配ってあげて。お皿とかスプーンとか一応洗ったから、まだ水切りカゴに入ってる」
「ん。手ー空いてる奴手伝えー。そのサラダ配って、皿持って来い。スプーンとコップはテーブルに置いとけ。濡れてたらちゃんと拭けよ」
「ウッス!」
カレーの盛り付けは各々でやる。残さないように自分が食べられる量を盛る為だ。
1年生が持ってきた皿を受け取り、炊飯器の隣に置くと、キッチンでが呼んでいる。
「トンカツも揚げたからさ、これも持って行ってよ。乗せたい人だけカツカレーにして。あと数量限定だけど、温泉卵も」
「美味そう。どっちも乗せてぇ」
「一、欲張り」
大皿に乗ったトンカツも炊飯器の隣に置いた。温泉卵が入ったタッパーはがカレー鍋の隣に置いていた。
全ての準備が整った時、及川が食堂にやってきた。Tシャツが変わっていたから、着替えてきたらしい。
主将なら先導切って、こういうのは手伝うべきじゃないのか。
「あー、良い匂ーい!及川さん、お腹ペコペコー」
「主将なら手伝えよ」
「痛い!蹴らないで!監督に明日の事で呼ばれてたんだってば」
「徹もお疲れ様。準備出来たから、お願いします」
「ありがと、ちゃん。それじゃ、皆順番によそって食べちゃってー」
いつものことながら、適当だ。及川が主将になってから全員揃って「頂きます」というのをした事がない。
準備が出来たら、温かいうちに食べて欲しい。というの願いを聞きいれたらしい。
及川を先頭に3年生が続き、2年、1年となる。
それぞれが席に着いて、一口食べると「美味い」という声が上がり、も嬉しそうに笑っている。
「このカレー美味いッス!」
金田一が同じテーブルに座り、一口食べると目を見開いて面白いようにびっくりした顔をした。
「だろ?美味いんだよ、のカレー」
「おかわりもいっぱいあるからね。たくさん食べてねー」
「ハイっ!」
俺が作った訳ではないのだが、が作った料理をこうも美味しそうに食べているのを見ると嬉しくなってくる。
「ねぇ、松川さん。何?あの夫婦感」
「さぁ、何でしょうかね、花巻さん。俺たち合宿じゃなくて、岩泉家の夕飯にお邪魔してんのかな?」
花巻と松川の会話は聞き流すことにして、俺も熱いカレーをスプーンいっぱいに乗せて頬張った。
それは当り前の感情
20161011 家長碧華
タイトル提供:MISCHIEVOUS