「、もし海外に住むことになったらどうする?」
この空の向こう
前々から、には相談していたことだった。海外のオファーがもしオレにきて、移籍することになったら、はどうするのか。一緒に海外で生活するのか、日本に残るのか。
オレとしては、離れて生活なんかしたくないから連れて行きたい
「海外?どこ?イングランド?イギリスならいいよー。
オファー来たの?プレミアリーグからのオファーなら即サインしておいでよ!
私も絶対ついて行くから。スペインとかだったらねー・・・考えよう」
そうだった、はプレミアリーグがだいすきで、イングランド代表がだいすきで、イギリスがだいすきだったんだ。
Jリーグしか観なかったがいつの間にか、プレミアリーグに夢中になっていて、名門のチームを応援していた。
きっとクラブワールドカップで、そのチームに夢中になったからだと思う
そんな、ちょっとミーハーな意見で海外で生活してもいいという妻の許しが簡単に取れた(プレミア限定だけど)。
オレはどこのリーグに行きたいという要望もなかったけど、このの意見でプレミアリーグに行きたいと強く思うようになる。
むしろ、フランスや、イタリアだったら、が日本に残ると言うかもしれない。
オレが高校を卒業した後にスペインへ独りで行ったのは、まだと結婚してないからっていうのも理由に入るけど、が行く気になってくれなかったのも理由に入る。
それだけは、どうしても避けたかった
海外からオファーが来るなら、プレミアリーグから来いと思っていた矢先、海外の移籍市場が始まった。
日本代表として活躍していたオレにも海外からオファーが届いた
「それはどこのリーグですか?」
「1チームはプレミア、もう1チームはスペイン」
チーム名を聞く前に、どこのリーグかを聞いてオレは「プレミア」と知ったとき、こうも都合よくオファーが来るか、と少し恐くなった。
もちろん、嬉しくも思ったし、正直顔が緩んだかもしれない
聞いていけば、プレミアリーグのチームの方は、あのが応援している名門のチームだ。
こっちのオファーを受ければ、はオレ以上に大喜びするに違いない
リーガエスパニョーラのチームの方は、高校卒業後にお世話になったチームだった。
また、オレを使いたいんだと監督直々に手紙まで送られてきていた。
あのときのオレよりは、格段チームのために仕事ができるし、恩返しはしたい
が、のことを考えると、プレミアリーグへ挑戦するしか道はない。
とりあえず、その日は結論は出さず、家へ帰ることにした
「。イングランドとスペインから、オファー来た」
「・・・・・・嘘っ!?」
「ほんと。嘘なんて言ってないし。イングランドはがだいすきな名門のチーム。
スペインは高校卒業してお世話になったチーム。・・・どうする?」
「・・・翼はどっち行きたい?」
考えてもいなかった言葉が返ってきて、ちょっと面を食らった。
真っ先に、イングランドだよ!イングランド!と言うと思っていた
「・・・イングランド行ってほしくないわけ?あんだけ、プレミア、プレミア言ってたじゃん」
「そりゃ、イングランド行ってほしいよ。でも、お世話になったチームでしょ?
翼、恩返ししたいとか思ってるんじゃない?」
「よくわかったね?そりゃしたいよ。それに、監督がオレをスタメンで使うとまで言ってくれてる。
出場機会はスペインのほうがちゃんと確保されてる。イングランドは全くのゼロからのスタート」
「・・・いいよ?翼のすきな方行きなよ。私は翼についてくだけです」
翌日、監督に昨日出た結論を話した。スペインでやりたいと。
世界最高峰のリーグに身を置きたいと。
そして、最終的にの夢も叶えてやりたいと
「奥さんの夢とは?」
「オレがプレミアリーグで、戦う事です」
「それじゃ、スペインではなくイングランドへ行けばいいじゃないか」
「いや、もっと、もっとレベルを上げてから行きたいんです。ボロボロにやられるオレを妻に観せたくないじゃないですか」
「それで、世界最高峰のリーグを選ぶと」
「恩返しもかねて、オレのチカラでチームもレベルアップさせようと思います」
「それじゃ、しばらくはJリーグには戻ってきそうもないな」
「・・・そうですね。やれるなら、ずっと向こうでやってたいです。それがオレの夢、かな」
そして、スペインへ旅立つ日。空港にはたくさんの記者とファンがいて。柾輝や、直樹、五助、六助など懐かしい顔もあった。
多くの人の見送りで、オレたちは自分たちの夢を叶えるために旅立った
「の夢はオレが絶対叶えるから。ちょっと時間が掛かるかもしれないけどね」
「いんだよ、時間かかっても。それに、私の夢は翼じゃなきゃ叶わないでしょ?
翼が、プレミアで戦う姿を観ることなんだから」
「それぐらいわかってる」
070107 家長碧華