「ママー・・・。ボク、よくなる?」
「大丈夫。はちゃんと元気になるよ」
「・・・うん。ねぇ、ママ?げんきになったら・・・」





蒲公英みたいな笑顔で





2歳の息子のが熱を出して、今ベッドで苦しそうにまどろんでいる。咳も出てきて、完璧に風邪だ。 は人生初めての風邪といってもいいかもしれない。 翼と外でサッカーをしてきて、雨に濡れて帰ってきても元気な子だったから。

さっき翼にが風邪をひいたとメールをした。 心配になっていることが、文章からも伝わってくるような返事がきた。 あと、のすきなものを買って帰るという事も書かれていた。


「今、パパがのすきなもの買って帰ってきてくれるって」
「・・・パパが?」
「何買ってきてくれるかな?プリンかな?ヨーグルトかな?アイスかな?」
「ボク・・・パパがかってきてくれるなら、なんでもいいよ」
「・・・はお利口さんだね」


の頭を優しく撫でてやる。熱が高いせいか、汗で少し髪が湿っている



「ただいまー」


「あ・・・パパだ」


いつもなら、嬉しそうに走って玄関まで迎えにいき、抱っこされてリビングへ戻ってくる。 今だって、玄関まで行きたそうに、でも身体が重くて動かないというふうに、悲しそうな顔をしている。


「パパ、連れてきてあげるね?」
「・・・うん」

「翼。おかえり。あっちで横になってる」
「ただいま」

ー・・・?大丈夫か?」
「パパ・・・」
のすきなものいっぱい買ってきたから。プリンもヨーグルトも、アイスも。食べる?」
「のどかわいた・・・」
「だと思って、ほら。ポカリ」
「パパ・・・ありがと」
「ん、早く元気になれよ?」


愛しそうにの頭を撫でてやってる顔は、パパの顔。 撫でてもらっているも嬉しそうに、眠りに入ろうとしている。 おやすみと、呟くように言ってもそれは眠りに入った後で、私と翼は静かにリビングへ行った。




「明日、熱がこのままだったら病院に行ってくるね」
「うん。俺もついていこうか?明日・・・午後から練習行くことにしてもいいし、休んでもいい」
「翼はちゃんと練習行って?も行ってほしいって言うと思うし」
「・・・?大丈夫。はよくなる」


今度はの頭をポンポンと撫でてやる。 不安そうな顔をしていたように、見えたから。 本当は俺も病院についていきたいけど、がそういうなら練習に行こう(とても心配で、練習になるかどうかわからないけど) 朝になったら熱が下がっているのが一番いいことなんだけど。




?熱測ろうか」
「うん。でも、ママ。ボクもうだいじょうぶだよ」
「ちゃんと測ってからよー」


耳でピッと測ると、体温は平熱に戻っていて、いつもの元気なになっている。更に確認のため、おでことおでこをあわせてみる。


「うん、治ってるね!」
「なおった!パパとサッカーできるっ」


ガバッとベッドから飛び降り、リビングで朝食中であろう翼のところへ走っていった。 パパー!と叫びながら、嬉しそうに走っていったを見て、私は安心した。


「治ったんだ、。良かったな」
「うん!ね!パパ!きょうボクもれんしゅうじょうつれてって!」
「練習場?今日は若菜んとこの碧人は来ないけど、いいのか?」
「うん!ママとね、パパのれんしゅうしてるとこ、みるの」
「あー・・・。と約束したんだよ、翼」
「俺の練習してるとこ見るって?」
「そう!ねぇ、つれてって、つれてって!」
「・・・しょうがない。今日は3人で練習場だね」
「やったー!ママ!つれてってくれるってー」
「良かったね、。用意しないとね!」


ボール!ボクのボール!と前日の姿は嘘のようで、病み上がりだとも思えない。 先月翼に買ってもらった、ガンバ大阪のロゴが入った子供用のエナメルバックに次々と道具をいれていく。


「ボールー。スパイクー。ぼうしももってこ!あ!ママ!」
「どうしたの?」
「ペンあるー?」
「ペン?」
「せんしゅのみんなにサインもらうのっ。このボールにいっぱいかいてもらうんだ。 将兄ちゃんがもってた!パパのサインもあった!」
「サインペンね・・・。・・・どこにやったかな」
、ペンはクラブハウスにいっぱいあるから。もっていかなくても大丈夫。風祭にあげたボールを真似すんのか」
「ホント!?サインくれる?」
「パパと一緒に行けば、絶対書いてくれる」
「早く行こうよ!ママ!パパ!」


練習場へ向かう車の中は、楽しそうなの声でいっぱいだった。









[おまけ]

「お、じゃねーか!久しぶりだなー」
「ゆうと!サインちょーだい!ここ、ここ」
「いいぜー。このでっかいサイン誰だよ。あ・・・椎名のだ。(キュキュキュッと)ほい、出来た」
「ありがとう!」
「サンキュ、若菜。次、誰の欲しいんだ?」
「つぎは、かんとくっ!」
「監督?監督どこ行ったかな・・・?あ、監督!サイン書いてやって下さい」
「ん?君は椎名の息子かな?」
「しいなです!サインかいてくださいっ!」
「おー立派な子だ。よし、書いてあげよう(キュキュキュっと)はい、どうぞ」
「ありがとう!」
「ありがとうございます」
「いやいや、くんは将来はお父さんと同じ立派なCBをやってもらうってことでチャラだよ」
「ボク、パパみたいなサッカーせんしゅになれるかな?」
「いっぱい練習しなきゃなれないけどね」
「パパ!ボクがんばるっ!」

「あ、!こっち、こいよ。若菜なんかと話してないで」
「だって、ついて回りたくないもん。恥ずかしいわ。は翼に任せた!」
「任されてもいいけど、を若菜と二人でおいておく方が俺は嫌だ。ほら」
「んー・・・ごめんね、結人くん」
「いや。また来いよ!」
を若菜に会わせには連れてこないよ」





070319 家長碧華