so brilliant
「、見てみなよ。原田くん、1500m走ってるよ」
4時間目の体育の時間。お昼の前の時間なだけあり、は空腹状態に陥っていた。女子は、体育館でバレーの練習試合。試合に出ていない女子生徒は、ほとんどがグラウンドに目を向けていた。
そのグラウンドでは、男子が授業をやっている。1500mと、陸上で最も過酷な種目をやっていた。
「あ、ホントだ」
友人のに言われるまで、はクラスメイトのバレーのを見ていた。外の男子など、どうでもいいというように。
しかし、巧が走っていると言われ、それを無視するのも気が引けたのか、は顔だけをグラウンドに向けた。
「顔が余裕〜って顔だね」
「余裕でしょ。巧、毎日走ってるし」
「そうなん?」
「そうだよ。知らないの?」
「そんなん、知らんよ」
あれだけ有名な、というよりモテてる巧だ。目撃情報があってもおかしくはないだろう。しかし、少なからずは知らないようだった。
朝早く走っているせいだろうか。でも、夕方走っているときもある。
「ふーん」
と、とくに気にも留めず再びバレーの方へ顔を戻す。試合がだいぶ進んでいた。この時間、もう一試合自分の番が来るだろうかと時計を見る。
お腹が空いて、あまり動きたくないなぁ。と思いつつ、時刻は授業終了の10分前を指していた。
(あ、出番ない)
「あんたは彼女だから知っとるんでしょ?」
の視線は相変わらず、巧に向けられていた。今は多分、ラスト1周まできたのだろう。他の男子から、原田!ラスト!と声がかかった。
「うーん・・・彼女だからって言うより、一緒に走ってるからじゃないかな」
「一緒に走っとるん!?」
巧に向けられていた視線が、いきなりに向けられる。はの視線が自分に向けられているとわかると、の方を向いた。
自分はなにか変なことでも言っただろうか。と思う。それくらい、は驚いた顔をしていた。
「うん。そんなに驚く事かな?サッカーやるには体力がなきゃね。・・・でも、ホントに涼しそう顔してるなぁ」
の頭越しに巧が見えた。涼しそうな顔をしていても、やはり汗は頬を伝って落ちている。
巧はぶっちぎりのトップのようで、100mほど後ろに1人息荒く走っている男子がいる。
誰が、どう見ても、体力がすぐ底をつきそうな走り方をしていた。
「原田くん、また女子からキャーキャー言われとるよ」
巧がラストスパートをかけた。の前を通り過ぎていく。息遣いが小さく聞えた気がした。
「今日は、巧にキャーキャー言う子の気持ちがわかるかも」
自分の前を通り過ぎていったとき、一瞬目が合った気がした。その一瞬にドキッとしてしまった、自分がいる。
少し心臓が五月蝿い。それが確かな証拠だった。ゴールして、袖で汗を拭う後姿をボーっと見つめていた。
「の方、一瞬見たね!」
友人の証言もある。目が合ったのは確かだ。
今日の帰り道、なんでこっちを見たのか聞いてみよう。
070513 家長碧華