どうして君なんだろう




「東京ヴェルディ1969 9 藤代誠二 FW 1月1日生まれ。その天性の才能は、中学校のときから既に開花していた。 現在、藤代と同じ年齢でA代表デビューしているのは、藤代ただ一人。 どんなに辛い戦いでも、弱音なんてはかない。楽しいときは、笑顔でプレーする。少年たちが描く理想のJリーガー。 その笑顔がときにはチームメイトに元気を与える。「あいつまで繋げば」と勇気を与える。今までにはない、FWが日本代表に加わった」


 「うわー何言っちゃってるの、誠二。自分で、自分の載ってる雑誌音読しないの。ナルシストな旦那なんかいらないわ」

 「ひ、酷ぇ!!段々三上先輩に似てきてるしっ」

 「え?亮先輩?冗談じゃないわよ。似てません」


他のサッカー選手もこうやって音読して読むのかしら。いや・・・ないわね。結人くんならありそうだけど。 それに、誠二はFWという結果が全てのポジションだからこれから罵声がたくさん耳に入ると思う。 それを見たら誠二はどうなるのかな?と心配にもなるけれど、今はそんな心配はいらないみたい。


 「まぁ、そんなことよりさー。このライターめっちゃ良い事書いてくれてるよなー♪ こう、俺が光ってます的に演出してくれてるってゆーかさ!読んだか?この雑誌!」

 「たった今、誠二が音読してくれました。笑顔ばっかじゃないの、あんた。本当サッカーバカね。いつまでたっても」

 「少年たちが描く理想のJリーガーかー・・・!」


その言葉がよほど嬉しかったらしく、いつも以上に誠二の笑顔は嬉しそうで、私はもう呆れを通り越し、微笑ましく思えた。

今こうしてソファに座り、雑誌を読んでいる間だって誠二の足元には小さなサッカーボールがある。 足の裏でただ動かしてみたり、両足で挟んでみたり、時には家の中でリフティングをやろうとしたり。

少年たちが描く理想のJリーガーというのは、当てはまるかもしれないけれど。 誠二は、少年のまま、サッカーがすきなまま、Jリーガーになったから今でも楽しくサッカーができているだけ。 本当は誰でも誠二のようなJリーガーになれるんだと、私は思う。

報道からのありもしないことを書かれたり、サポーターから野次られたり、お金欲しさに頑張って空振りしちゃったり、 結果が出なくてイライラしたり、っていうのがあるからサッカーを楽しめなくなってるJリーガーがいるんじゃないかな。


「なーー。腹減ったー!」
「キッチンにまでドリブルで来るんじゃないの!」


口にはしないけれど、周りからなんと言われようと、貧乏になろうと、決定力不足と言われようと、 このままの誠二であってほしいと思ってます。






[アトガキ]
拍手第一号の誠二くん。アレンジ済み。

070507 家長碧華