「なーお前ら!昨日のサッカー観た?」
「代表戦のやつ?」
「私先週のJリーグも観てんだから」
「オレJリーグ観に行った!ジュビロを応援しに」
「いいなっ!言ってよ!連れてって」
あなたに吹く風
昼休みが終って、次は5時間目。英語の授業。
お腹も満腹になって(つっても、3時間目くらいで弁当は早弁)、わけのわからない言葉を聞いてればそりゃ誰だって眠りに落ちる。
あ、落ちた。は何とか頑張ってっけど、時間の問題だな。
…はとっくに落ちてるし。
前の席のとその左隣のは、バカだから気持ちはわかる!
は…バカなオレらと一緒にいるのに学年首席だから寝てもよしっ!
オレはーイングランドじゃなくて、スペインとかフランスに移籍すれば問題なしっ!だから寝よう!
「おい、こら山口。何寝ようとしてんだ。バカ4人組で寝てどーすんだよ。ほらっ、起こしてやれ」
ちぇー。今日はついてない。今日はユースの練習もない。更についてない。
はこんなに気持ちよさそうに寝てるのに、起こせって?
オレにはできねーっ!!と頭をがーっとくしゃくしゃにしてみた。
そしたら、ちょっと遠いとこに座ってるの親友がこっちみて笑ってやがる。
あいつはオレがが気になってるってことを知ってるし(オレが相談したんだけど…)、協力してくれるって言ってくれたし。
何もかもあいつにはお見通しってわけか。
前の2人は難なく起こす。椅子をちょっと蹴ってやって(前にもやったら、やっぱりオレのキック力は凄いらしい)
「ー…。起きろってー」
「…んー?あー…おはよ、おバカ3人組」
「ー!もいれて4人組だろー?」
「な、私バカじゃないんですけど!何含んじゃってんですか、私まで!」
寝れないとわかった英語の時間は、退屈で、寝るなといわれると更に眠くなる。
の頭がまたかくかく揺れている。
は窓に背を向け、としゃべって眠気を覚まそうと決めたようだ。
はさっきのおバカ4人組の件で目はぱっちり覚めているようだった。
「圭介!これ聞いてみなよ。バンプの新曲らしき曲。極秘でゲットー」
「は?極秘?お前そんなルートあんの?」
「掲示板で着うた取ってきただけだって、気付けよ圭介」
「なんだよー。ただの掲示板かよ。じゃ無料じゃん」
「いいから、聞く!」
そして左耳に入れられる、のイヤホン。
の右耳には、片方のイヤホンがつけられている。
別に、イヤホンなんかつけなくても携帯なんだからスピーカーがついてる。
いや、オレにとっちゃ嬉しいんだ。イヤホンの方が。
この曲がそんなにいいのか。は機嫌がよさそうで、笑顔でリズムに乗っている。
今のオレの中では「バンプの新曲らしき曲」より「の笑顔」なわけで。
いや、自分でも何思ってんだろって感じだけど事実なんだから仕方ないだろ。
6時間目でやっと運が良い方へいったみたいだ。そりゃ、2連続でついてなかったんだから、当たり前だ!
生物の時間は先生が休みらしくて、自習だった。
オレら(オレととと)はいつも通り普通の会話をして、バカやって、騒いで。
授業があと10分で終るあたりでの彼女がオレらのとこにやってきて、が連れられてった。
「とちゃんって、幸せそーだねー」
「あーオレも彼女欲しいっ。な、圭介♪」
「お、おー。て、は好きな奴いないじゃん」
「そーだった。そこからだ、オレは!やべー部活のメニュー考えておかねーと、いけねーんだった」
そういってもいなくなってしまった。
はサッカー部のキャプテンだ。今日だけ練習に混ざったらダメかな。
なんて、サッカーばっかりだなオレの頭はとすこし笑ってしまう。
「は好きな人もいないのかー。私も彼氏欲しいなー」
このヒトコトでサッカーは吹っ飛んで、らしくないドキドキ感があふれてきた。
言うなら今しかないのかもしれない。けど、何て言えばいいのかわからない。
「じゃ、オレと付き合って、みる?」
もー口任せだ、と言ってみたら「愛の告白」とは言えない告白。
もちろん、だけに聞えるように。
なんてったって、今はクラスの皆が同じ場所にいるのだから。
はもちろん、驚いた様子でオレをずっと見つめている。
そりゃ、そうだ。逆だったらオレだって驚いてるはずだ。
「付き合ってみようか。圭介のことすきだったんだよ?」
「…へ?」
「いやーそんな変な顔しないで!かっこいい圭介でいて!」
「…お、おー」
オレはと付き合うことになったらしい…。
え、ちょ、かなり嬉しい。ついてないことが2度連続で起こったあとは、ついてることが2度起こった。
むしろおつりが出そうなくらいついてることがラストに待っていてくれた。
061010 家長碧華