「、今日の練習観に来ない?」
「なんで?」
「なんとなく」
「行くかなー。暇ったら暇だし」
週に約5回(日、月、木、金、土)圭介はジュビロ磐田ユースの練習に学校から直接行っている。
今週は土曜日の練習がないらしい。先週の土曜日に清水エスパルスユースとの練習試合があったから。休憩も大事。
前にも何度か練習を観に行ったことがある。ユースの練習なのにサポーターの人が十数人いたのには驚いた。
それだけユースにも注目されている証拠だ。
その中に自分の彼氏がいるのはとても誇らしかった。
「明日、バレンタインだねー」
「そうだなー。もちろん手作り?」
「もちろん手作り。チョコとクッキーどっちがいい?」
「どっちも欲しい」
「うわー圭介、欲張りー」
「の作ったお菓子は美味いからいいんだよ」
学校から地下鉄で20分。そこからバスと徒歩で10分くらいのところにあるユース専用の練習場。
たまにトップチームと同じ練習場で練習をすることがあるみたい。
いつも一人で、学校が終ったあとにここにくるのは大変だなーって思うけれどサッカーがやりたくてやりたくてたまらない圭介はなんとも思ってないだろう。
「今日の練習何時までなの?」
「なんか早く終るみたいなんだ。6時まで」
「だから私誘ったのね」
「当たりー。だって練習も観て欲しいじゃんか。でも、帰りたくなったら適当に帰れよ?」
「大丈夫。帰りたくならないから。サッカーは観てて飽きないもん」
サンキュと笑顔で言われ、いつも通り圭介はチームメイトが準備しているクラブハウスへ入っていった。
緑の綺麗な芝生にはもうすでに走ったり、ストレッチしたりしている選手がいた。
私は観覧用に用意されているベンチに座って練習開始を待っていた。
今日は暖かいなーと空を見上げていたら、聞きなれた笑い声が聞えてきた。
圭介がチームメイトと楽しそうに笑いながら、グラウンドに出てきた。
私が座っている場所を発見すると、その笑顔のまま軽く手を上げる。
「ちゃんと俺のこと観とけよ」というアイコンタクト。
練習になると全員が真剣モードに入る。今日は紅白戦で、実践中心らしい。
圭介は黄色いビブスを来て、司令塔のポジションに入る。
紅白戦に魅入ってしまって、いつの間にか練習を観にきた人たちが増えていることに気がつかなかった。
今日は平日、月曜日。いつもの月曜日より人が多い気がするのは気のせいだろうか?
そう思っていると近くにきた女子高生2人組みの話している内容が耳に入った。
「チョコ、受け取ってもらえるかな?」
「だって明日練習ないんでしょ?今日渡さなきゃダメじゃん!」
「だよねー。今日練習来てるかな、圭介くん!」
「どうだろ・・・。あ、あれ、あれ!いる、いる!黄色の8!」
「あ、いたーっ!良かった!」
なるほどー・・・バレンタイン当日練習がないから今日チョコを渡すのね。
しかもお目当ては圭介くんですか。圭介モテモテー。あっちの子たちも圭介くんだーっとか言ってるのが聞える。
ちゃんとチョコ受け取ってもらえるといいねー。
なんで自分がこんなに冷静に、むしろ圭介くんだーっと騒いでる子たちを応援しているのかがわからない。
普通の彼女なら、圭介の彼女は私よ、とか思ってイライラするのかもしれないけれど、全く思わない。
監督がホイッスルを3度鳴らす。選手たちが監督の方へ走っていき、最後のミーティングらしい。
これが終れば練習は終了。
「あ、ミーティング始まった。練習終るよ!あっちで、出てくるの待とう!」
「うん、行こう、行こう!」
あぁやって監督が3度ホイッスルを鳴らし、ミーティングのようなものをやる。
それが終れば練習終了というのを知っている彼女たちは相当ここに通っているのだろう。
いいなー友達になりたいなぁーとさえ思ってしまう。
今日はあっちで待たないほうがいいだろう。圭介がこっちに来てくれるのを待とう。
私のためにいっぱいチョコを受け取ってきてくれ!と思い、まだ自主練をしている選手をボーっと見つめる。
「あ、。まだこっちに居たのか」
「うん。お疲れ、圭介。チョコいっぱい貰ったようだね?」
さっきの女の子たちはちゃんと圭介くんにチョコを渡せたようです。良かったね。
そのほかにも圭介にチョコを渡した女の子はいたようで、圭介が持っているチョコは2個ではなかった。
少なくても、5、6個は持っている。エナメルバックに入らないのだろうか?
「も食う?」
「食べる!」
「おう、んじゃ、帰るぞー」
「チョコを手に持ったまま?」
「だって、エナメルに入らねーんだもん」
「じゃ、私のカバンに入れたげるよ」
「マジ?サンキュー」
もう暗くなってきている6時過ぎを手を繋いで圭介の家に向かう。きっと圭介の家に着くのは、7時頃だ。
今日の山口さん家の晩御飯はなんだろうね?と喋りながらまずはバス停に向かった。
明日はさん家の晩御飯だからね。
君の為に出来ること
070214 家長碧華