「ねぇねぇ、昨日のサッカー観た?」
「あ、ちょっとだけ観た」
「なんで、ちょっと!?すっごいかっこよかったんだから!」
放課後。今日はお昼がなんだか忙しくてお弁当に一切手をつけられなかった。
5時間目は体育で、動いていたらお腹が減ったというよりもう食べなくてもいいや、という一線を越えてしまった。
その次の時間も移動教室だったので、放課後の今まで朝食以外何も食べていない。
友達二人と放課後の誰も居ない教室で遅い昼食を取る。お弁当を広げるとお腹が減ってきた。
は既にパンを頬張っていた。美味しそうに食べるなー。もう半分食べちゃったよ。
「2点目なんてね、強烈なミドルシュートで!」
「あ、私それはニュースで観たよ!凄かったね」
「でしょ!ほんっと凄かった!」
「あーハイハイ」
無理矢理二人をサッカートークに巻き込み、おかかののったご飯を一口。ん、美味し。
私がご飯を食べるのに静かになっていたところを突いたのか(いや、そんなの気にしてないと思う)が違う話題に変えていた。
いいや、私はご飯が食べたい!お腹が減った・・・!
二人の会話をうんうんと相槌を打つだけで聞いていたら、突然ガラガラとドアが開いた。
「あれ、隆也。どしたの?」
「なんだ、、今頃メシ?」
「そうなんだー。お昼食べられなくてさ」
部活にはちゃんと遅れるってキャプテンに言っておいたし、お弁当を食べ終えたらすぐ行くつもりでいた。(サボりなんかじゃないよ!
正当な理由が私にはある!)隆也にも言っておいた。
練習着姿のまま、私の隣の席に腰を下ろす。どうしたの?と再び尋ねる。
「はやく部活来いって。サボりだと思われんぞ」
私たちのやりとりを聞いていた二人は、いつの間にか二人だけでまたさっきのように楽しくおしゃべりの続きをしている。
私と隆也のことをよく知っているのはこの二人だから。
「サボりじゃないもん。あ、隆也卵焼き食べる?」
「食う」
「ん、あい」
箸でつかみ卵焼きを隆也の口元まで運んでいった、隆也はそれをパクッと食べた。
もぐもぐと顎が動く。お昼時間一緒に食べるときにいつも思うけど、何かを食べている隆也はなぜか可愛い。
私も残りのウインナーを食べ、急いでお弁当をしまって二人に別れを告げた。
隆也は既にドアの側に立ち、私を待っている。バタバタとエナメルバックを机にぶつけて大きな音を立てながら隆也の元へ。
「お前、あの机ずれてんじゃねーかよ」
「え?いいよ、いいよ。だいじょぶ」
グラウンドへ向かう途中、ついつい笑ってしまった。なんだよ?と変なものでも見るような目でこっちを見ている。
だってさ、隆也が人前であーん。ってやつをなんの躊躇もなくしたんだよ?隆也変わったなーと思って。
多分、本人はあの時なにも思ってなかったんだと思う。私が今そうやって言った途端右手を口元に当てて耳を赤くしている。
「そーいえば、そうだよな・・・。オレ、どしたんだろ」
「卵焼きが食べたかったんだよ!そういうことにしておきなさい!」
オレ、そこまで卵焼き好きじゃねーぞ。と言う隆也の耳はもう普通の色に戻っていた。
「オレ絶対と付き合って変わったな」
「それ周りが結構言ってる」
「マジで?」
「うん。阿部くん、よく笑うようになった。阿部くん、ちゃんと付き合ってから変わった。阿部くんが可愛く見える」
「おい、ちょっと待て。最後のはなんだよ?」
「最後のは私だけかな?そう思ってるのー」
はーやく、ぶっかつにいっきたいなー。と隆也の前をスキップしながら上機嫌で誰も居ない廊下を渡る。
後ろから、なんだよ!それ!と私の歌にツッコんだのか、私の思いに照れてるのか、どちらかわからない言葉を叫んでいる。
シー。隆也ここは廊下なんだから!と振り返ると隆也に腕をつかまれて、私は隆也の腕の中に納まっていた。
「あ、の!ここは廊下だよ?」
「ンなのわかってるよ。お前が悪い」
そういって隆也にキスをされた。学校の誰もいない廊下で、キスをされた。
「お前の方が可愛い」
今度は隆也が先に歩いていく。本当隆也は変わりました。でも、どう変わったのかは私だけの秘密がよかったなー・・・。
隆也、あんまり人前で変わらないで!と後ろから飛びつくと、は?わけわかんねーと隆也の腰に回っていた私の手を取り、繋いで歩く。
今日の隆也は、昨日の隆也よりかっこよかったです。
神様が笑ったような気がした
070920 家長碧華
タイトル:てぃんがぁら様