「あ、うちの練習試合用のユニと同じ色だ」
「ホントだ。でも逆だな。うち、アンダーが水色でユニは黒じゃん。あの学校アンダー白だし」
開会式が始まる。選手入場までの間、会場の外でそのときを待っている。他の学校もいるから、どこを見ても、高校球児であふれて賑やかだ。
の視線の先には水色のユニフォームの学校。へー・・・いるんだ。そんな学校。いままで知らなかった。の視線はその学校から離れない。ただジッと見つめていた。
ボーっと見ているわけではない。なにかを考えているのか真剣な目つきをしている。名前を呼んでやると、やっと離れてオレと目が合った。
「なにジッと見てたんだよ?」
「だって、あの水色はうちのだもん。練習試合用でも、うちだけだと思ってたし。・・・ムカツク」
なんでお前がムカついてんだよ、と軽く笑う。があのユニフォームを着ているわけではない。マネージャーには、ユニフォームなど支給されない。
なのに、は心底ムカついているという表情とオーラを醸し出している。本気で三星の野球部がすきなんだなあと思わせるには充分だった。は真剣に、「だから」と続けた。
「だから、あの学校と戦うことになったら絶対勝ってね」
「どの学校にも負けねえよ」
「そだね。そうだよね。修悟がいるもんね」
「じゃねー」とさきほどの真剣な表情とはまったく別の笑顔になり、手を振ってはスタンド入り口へと消えていった。マネージャーのは一緒に入場する事ができないからだ。
オレはまだ1年生だ。だけど、ベンチに入ってるから出れる可能性はある。(ピッチャーっていう交代の多いポジションだし)修悟がいるもんね。と言ったときのの笑顔が頭から離れない。
ソノ期待を裏切って、アノ笑顔が見れなくなるのはごめんだ。おっしゃ!と自然と声が出ていた。自分に気合を入れる。「お?やる気だな1年?」と3年の先輩が頭を叩いてくる。
もちろんですよ、と返すと、入場だというアナウンスがかかった。入場行進の音楽が聞える。テンションがいいカンジに高まってきた。
とどめのゼロ
(叶っ!マウンド行ってこい!)(ハイ!)
071011 家長碧華
as far as I know