昨日、暑くてあまり眠れなかった私は、授業をなんとか乗り切り、休み時間に少し寝てしまえと机に突っ伏した。 そんな私の気持ちも知らずに誰かが背中を叩いてくる。寝ている私の背中を叩くなんてしか考えられない。



「あんな叶とデートするんだって?」
「映画見に行くだけだよ。デートじゃない。デートはカップル!」
「2人で行くんでしょー?昨日叶から聞いた」



私の中でデートというものは「カップルが仲良く出掛ける」というイメージで、私と修悟の間にそのイメージは合わさらない。 ただ見たい映画あって、2人とも同じものが見たくて、でも見に行く人がいない、じゃー一緒にってなっただけ。 修悟とは中学生のときのクラスメートで、結構仲が良かった。 私は修悟の性格を嫌いだとは思わなかったから。

高校に入ってまだ一度も会っていない。メールだって全然だ。 修悟からのメアド変更メールから、映画見に行こうよになったんだ。 久しぶりに修悟に会えるのは嬉しい。変わったのかな?と少しドキドキする。



「やっぱり叶、がすきだったんだね」
「なに言ってんのー」
「中3のへの誕生日プレゼントで、もしや・・・とは思ってたけど」
「ただのCDだったじゃんか」
「3枚も!2枚はCD-Rだけど、1枚は本物!叶に確かめたらオレがすきなグループだから聞いてほしくてって。
だからそのCD2枚も予約したらしいの!」
「なんでそんなの確かめてんの・・・っ!」
「普通友達のためにCD2枚も予約する?それにCDって何気に高いの!」



ここまで力説できるがすごいと内心感心するも、の言ってることはよくわかる。 私なんて自分のためだけにでもCDは予約しない。 高いからほとんどがレンタルか今の時代はネットでダウンロードなんて便利なものが出来てて買うことが殆どなくなった。 叶家はお金持ちだわ。「何年越しのデートなの?健気だわ、叶!可愛いところあるじゃん!」 なんてどこか違う世界に行っちゃってるを心の中で謝りスルーさせてもらった。 チャイムがなる。寝れなかった・・・!次の時間は生物だ。ええい、寝てしまえっ!










# # # # #










「行ってきまーす」
「気をつけてね」



9時にバス停で待ち合わせをしていた。歩いて7分ほどの近さだけれど15分前に家を出た。結構な人がバス停にいる。 修悟、修悟と目を向けると、その姿は直ぐに見つかった。学生らしいのが修悟だけだ。あとはどうみても年上の人たちだから。 修悟から聞く久しぶりの朝の挨拶が少し嬉しかった。



「変わったねー。なんか男らしくなったというか大人らしくなった?」
「そういうは全然変わってない」
「うん、よくいわれる」



駅へ行って、地下鉄に乗り換えて映画館を目指す。 イスに座り、学校の話で盛り上がっていたら、ふと向かいに座っているおばあちゃんと目が合った。 優しく笑っている。カップルだと思っているのだろうか?そう思うと修悟の隣に座っているのがとても恥ずかしくなった。 急に静かになった私を呼び、顔を覗き込んでくる。 物凄いどもりながら私はなんでもないと言うのが精一杯で、心臓がドクドクいっている。


(し、しゅ修悟が、かっこよくなってる・・・っ!!)


昨日に散々言われ、修悟に顔を覗き込まれただけでコレだ。私ってば単純だなーとつくづく思う。

そのドキドキは映画館の席に着くと少し治まった。 カバンというものを持ってきていない修悟はチケットを買ったときに一緒にもらった映画紹介のパンフレットをどうしようかと丸めていた。 捨ててこればよかったのに。なんだか可笑しくておもわず笑ってしまう。 私のカバンにいれてあげるからちょーだい。あと上着。膝の上、やでしょ?私の隣空いてるからおいてあげる。 ほら、と促すように手を差し伸べる。「マジ?サンキュ」笑顔でパンフレットと上着を私に渡す。修悟ってばお洒落な上着持ってるなー。



このまま何事もなく家に着いて、お母さんに面白かったよーと伝え、になにもなかったよ、やっぱり!と伝えようと思っていた。



「なあ、すきなやつ、できた?」



そう聞かれたのは帰りの地下鉄の中だった。終点まで行く私たちの周りに乗客はまったくいない。 別車両に何人か数えられるくらいの人が乗っているだけだった。びっくりして修悟を見る。 「そんな驚くことねーだろ」なんて呟いているけれど修悟の耳は赤い。いつもの帽子でもあれば、深く被って誤魔化すのだろう。



「できないなー。良い人いないんだもん」



「うちの学校、かっこいい男子がいない」がの口癖のようなものだ。いるじゃん!と私が反論しても全く聞く耳を持たない。 「のカッコイイの基準がわからない」といって一蹴されるだけだ。



「オレ、いるんだ。付き合いたいってやつ」
「ほー?どんな子?」
「オレの隣に、座ってる子」



わ、わわわ私!?じゃないよね!きっとクラスで隣の席の可愛い女の子だよねっ!なんで私、自分って真っ先に思ってんのバカでしょバカ! 自意識過剰は嫌な女よ!!



?」



帰りの地下鉄でも修悟に顔を覗き込まれてしまった。そんな切なそうな顔しないで!



「と、と隣に座ってる子って・・・」



ゆっくりと人差し指を自分に向ける。ち、ちちち違ったら私は本当のバカだ。 修悟は、先ほどと変わらない体勢(まだ覗き込まれてるよお!!)で頷いた。



「私、修悟のことすきなのかよくわかんない。嫌いじゃ、ないよ!」
「それでもいい。惚れさせる自信はある」



笑って、茶化してあげようかと思ったけれど、それは修悟の唇によって阻止された。ドキドキしてはち切れそうだ。 こんな気持ちは久しぶりで、どうしていいのかわからない。



「もう惚れた?」



ニッと笑う修悟に本当の事は言えず(私ばっかやられっぱなしは嫌だから)とりあえずデコをぺチンと軽く叩く。



「煩い!修悟にファーストキス奪われた」
「え、初めて!?中3ンとき付き合ってたじゃん」
「あいつとはしてない。ウブだったから」



あれから私は「すきだよ」というタイミングを逃してしまい、修悟のアタックをドキドキ、ドキドキしながら心臓に悪い毎日を過ごしている。






この想いに窒息しそう
(今度修悟が完投勝利したら、言おう・・・!!)(そういえばこの間完投完封だったんだぜ。人生初)(う、え、いきなり・・・!!)




071023 家長碧華
 タイトル提供:MISCHIEVOUS