19時30分過ぎに、身体を動かし足りないという理由で家を出た。ランニングに行ってくると取っただろう弟はチャリのカギを持つオレを不思議そうな目で見ていた。
チャリを飛ばして約10分。の家の前についた。この道を真っ直ぐ行けばコンビニだからよく通る道だ。の部屋に明かりはない。リビングもついていない。
今日もちゃんとここまでを乗せてきて、ドアを閉めるまで確かめた。どこかに行ったのか?特に理由はないがケータイを取り出して電話してみた。
「もしもし、今どこ?」
「え?なんで?」
「部屋の明かりついてないから。まだ8時前だから寝てはいないだろ?」
「コンビニへアイスとジュースと部活のなくなったバンソウコウを買いに」
水谷にバンソウコウを貼っていたのを思い出した。なにに貼ってもらってんだ、とその後一発殴ったんだ。ソレぐらい自分でやれと。アレが最後の一枚だったのか。
「一人か?」
「うん、もちろん」
「チャリ?」
「ううん、なんとなく歩き」
こんな暗い中、女子高生が一人で歩いてコンビニ行くか普通・・・!と危機感の少ないに不安を覚える。そういえば今日、担任が変質者が出たから気を付けろと言っていた気がする。あのバカ・・・!!
のことだから朝のSHRの担任の話なんて聞いちゃいないだろう。聞いていたとしても「私には関係ないやー」とかなんとか思って覚えてもいないだろう。
「今からそっち行く」
「なんで!もう家着くよ」
「はあ!?コンビニじゃねーのかよ?」
「隆也から電話きたときすでに帰り道を歩いてました」
「じゃ、今どこら辺・・・」
コンビニへ続く真っ直ぐな道を暗闇に目を凝らす。
「あ、いた」
「たーかやあー!」と電話口からと数メートル先にいる本人から直に聞えてくる。そんな大声で呼ぶな。近所迷惑だろうが。通話終了ボタンを押しケータイをポケットにしまう。
コンビニの袋をガサガサと鳴らしながら走ってくる。
「なに、隆也どしたの?」
「いや、用事はねーけど」
「ほら、弟用に買ってきたアイスあげるから中入ろう?」
「は?もう8時近いんだぞ?こんな時間に彼女の家に上がれるかよ」
さっきポケットにしまう前に時間を確認したら7時50分。いつもならまだ部活中の時間。ミーティングだけという今日のような日はいつも時間が長く感じる。
だから、シュンに「身体を動かし足りない」と言って家を出たんだ。
「まだお母さんもお父さんも帰ってきてないって言ったら?」
「・・・が一人なら考えるけど、弟は帰ってきてんだろ?」
「じゃ家入ろうー!火曜日は、弟は練習で帰ってくるのは9時すぎ」
「マジかよ」
「マジだよ」
そうだった。の弟はサッカーのクラブチームに入っていて、練習がある日は9時すぎまで帰ってこないとから聞いたことがある。
その練習のある日まではわからなかったが、毎週火曜日は練習があるらしい。一応覚えておこう。
「良かった。家で一人はつまんなくて。隆也ナイスタイミング」
「おばさんたちが帰ってくるまでな」
チャリを適当な位置に止め、ドアを開けて待っているに礼を言って中に入った。
「お母さん帰ってきたらきっと一緒に晩御飯だよ。食べてきちゃった?」
「軽く食ってきた」
「じゃうちでガッツリね。ほら、早く!アイス溶けちゃう」
「はい、はい」
「ただいまー」
「お邪魔します」
それから数十分しておばさんが帰って来た。こんな時間に・・・などと言ってオレを邪険に扱う事は全くなかった。の言った通り、晩飯を勧められたから、ご馳走になることにした。
泊まって行けば?とまで言われたが、明日も学校、朝練なのでと、そこは断った。
「おばさんってあんなに気さくだと思わなかった」
「そ?いつも私が隆也の事話すと嬉しそうに聞いてくれるよ」
「ソレも知らなかったな」
「今度は泊まりにおいで!」
「ん、近々」
じゃ、と言いオレはチャリを漕ぎ始める。途中、の弟とすれ違った。「こんばんはー!」と姉と同じように大声で挨拶をしてくる。似た者姉弟だ。うっす、とだけ返した。それしか返す時間がなかった。
二人ともチャリだ。話す時間なんかない。だからといって別に止まって喋るほどでもない。
やべーな、結構ん家いた。と思いながらチャリを漕ぎ続けた。
月が見てる
(姉ちゃん、隆也に会ったよ)(さっきまでうちにいたんだよー)
071107 家長碧華
タイトル提供:MISCHIEVOUS