これが夢かどうかもわからない。よくこれは夢だとわかって見ているとか言ってる芸能人を見るけれど、オレはそんな経験はなかった。
起きてようやく、夢だったのかと思うことしかない。夢を見ているときはそれは現実なんだとしか思えない。
今日の夢だって、すごくリアルで現実だと思って見ていた。いつもの7組の日常的な夢を見た。ただ違うのはオレに彼女がいたことだった。オレの彼女はだった。
朝、目が覚めて自分に苦笑いした。オレ自身が思っているより、オレはがすきなんだなと苦笑いした。
「花井くん、今日部活ないんでしょ?」
「ああ、監督が付けないらしいからないって」
「じゃあさ、どこか行かない?デートしよ!」
「お、おぅ!」
夢の中でまで「花井くん」と呼ばれるオレは小心者かもしれない。そういう関係なら普通下の名前呼びだろう。今日のオレは、夢をよく覚えていた。朝練へ行く準備をしながらぼーっと夢のことを考えていた。
マネージャーのは来る時間は部員よりも遅い。と会ったときオレはどういう反応をすればいいんだろう?
いや、向こうはこの夢を見たわけじゃないんだから、普通に接しなきゃ怪しまれると一人焦り、思考を切り替えるため頭を左右に振る。
手を繋いでたしかバスに乗り込んで、映画館に行った気がする。なんの映画を見たのかまでは覚えていないが、と映画を見ているということに嬉しさを感じていたのは覚えている。
その後は声が段々遠くなるように、消えていった。チャリを漕ぎながら、風に当たり頭が徐々に冷えてきた。バカな夢見たなーと余計に思えてくる。
「ちわっす!」
グラウンドにはまだ誰も来ていなかった。いつもそうだ。オレが一番最初に来て、グラウンド整備をしているとすぐに阿部が来て、西広が来て、泉が来る。今日も変わりなく真っ先にトンボを取りにベンチ横へ向かった。
「ちーっす」
その男らしい言葉とは結び付けられない高い声がグラウンドに響いた。阿部でも、西広でも、泉でも(もちろん他の部員でも)なくソレはマネージャーのの声だった。オレは思わず「!?」と声が裏返りそうになった。
マネージャーが来る時間まではまだ後約1時間ほどもあるのだから。
「あれ、花井くんしかいないの?」
「あ、あー。いつもオレが一番だからな」
「そうなんだ。流石キャプテンだねー。もう私は眠くて、眠くて仕方ないよ。今日の授業は全部寝る勢いだわ」
眠そうに目を擦りながらベンチへと向かっていった。一体何をしにこんな時間へ来たのだろう?
オレはあの夢を思い出してしまい(別にこんなシーンは見ていないし。正夢なんかではないけれど)妙にを意識してしまう。早く誰か来てくれよ!とグラウンド整備に無理矢理集中しながら心の中で叫んでいた。
「私も手伝うよー?なにすればいい?あ、ボール磨いておこうか?」
「お、おう!頼む!」
「了解ー。頼まれた!」
一度オレのところへ走ってきて、またベンチへと戻って行った。一体何故こんな朝早くから朝練に来たのかを凄く疑問に思ったいたとき「ちわっす」と阿部の声がした。
「阿部くんおはよー!」「おはよう」とが阿部と朝の挨拶を交わしていることにイライラする。・・・朝の挨拶だぞ?「おはよう」としか交わしてないんだぞ?オレはさっき阿部よりも長い会話をしたじゃないか!
阿部に挨拶をした後、はオレが頼んだボール磨きを黙々と始めた。なんでこんなことでイライラするんだと頭を抱える。そして恥ずかしくなる。
「おい、花井どうした?」
「なんでもねーよ」
「そうか?お前同じとこばっかグラ整やってるぞ?」
「あ、まじで?き、気にすんな!」
不思議そうな顔をして阿部はマウンドのグラウンド整備を始めた。阿部にバレたか?いや、これぐらいじゃ流石の阿部でもわかんないだろう。挨拶ぐらいで嫉妬してるなんて、オレは本当にバカかもしれない。
でも、それほどがすきだった。
想像するのは容易いけれど
(花井くん!キャッチボールこれ使って!私が一生懸命磨いたボール!)(お、おう!サンキュ!!)
071108 家長碧華
(GRANRODEO/未完成のGUILTY/相沢大和さんリク)
タイトル提供:てぃんがぁら