、カレシ待つついでに勉強付き合ってくんない?」
「ん、いーよ。どこでやんの?」
「図書室」
「あ、本読むっ!」
「あんた今してた会話ちゃんと理解してんの!?勉強しに図書室行くって言ったでしょ!」



期末テストが一週間後にある。周りはテスト勉強に追われている。私は基本、前日やそこらしかやらないから、一週間も前から勉強している友達を素晴らしいと思っている。 (なんて一ヶ月も前から勉強するらしい!もうありえないっ!)今日はカレシと一緒に帰るらしく、向こうの用事が済むまでの間勉強して待つと私を図書室に誘った。えらいなあ!本当えらい!

図書室に着くとは早速英語のワークにとりかかろうとした。とりあえず私は隣に座り、いつ本を読みに立ち上がろうかとを伺っていた。が、「あんなたもやりなさい」の一言でその計画は崩れた。



テストは大丈夫なの?」
「大丈夫じゃないよ。もうどうしようもないんだよ」
「・・・そう言っていつも良い点取るんだから。やんなっちゃう」
「私より良い人はいっぱいいる!」
「10人くらいじゃん!なにがいっぱいさ!」
「あ、隆也からメール」
「人の話も聞かないし」



本文には「今どこにいる?」の一文だけだった。一緒に帰る約束したかな?してないと思ったけどな?

とりあえず「図書室だよー」と返信した。それから隆也から返事はこなかった。うーん・・・?なんの用事だったんだろう。 ナゾだ。「隆也」の文字を見た瞬間嬉しくなったのに、返事くれないなんて・・・切なくなるだけでしょ!



「阿部くんこっち来るって?」
「うーん・・・来ないんじゃないかな?よくわかんないなー・・・もう」



「詳しいってなんだっけ」とシャーペンをくるくる回しながら考えているは本当に偉いと思う。familiarだよと助けてあげると「うわー・・・覚えてない!」とペンの色を変えて、真面目に勉強している。 私も英語のワークは開いてはいるものの手をつけてはいない。授業中にやったとこ以外は相変わらず真っ白だ。周りをキョロキョロ見渡すと勉強している人が何人かいる。きっと出来る人たちだ!

キョロキョロしているとき図書室のドアが開いた。のカレシが来た!勉強から開放される!そう思い喜んで見てみると入ってきたのはのカレシではなく、私のカレシだった。



「阿部くん来たじゃん」
「お前、カレシの顔見て嫌そうな顔するなんて、失礼だな」
「だ、だって!開放されると思って!」
「あ?開放?」



隆也が私の机に手をつくと「ああ」と呟いた。「勉強から開放ね」そう言って近くのイスを持ってきて私の隣に座る。そして、英語のワークを覗き込んできた。あー・・・見られちゃったよ。



「なんもやってねえじゃん」
、そんなに本読みたいの?」
「読んでもいいの!?」
「・・・何読みたいんだよ」



そのときまたドアが開いた。今度こそのカレシだ!ほら、キョロキョロして自分の彼女を探している!私は嬉しさのあまり、をビシビシと叩き、開放される!と (心の中で。私ってば偉い!だって、ここは図書室だから)叫んだ。

「じゃあねー。はちゃんと勉強しなよ」と一言多いに手を振り、隆也の方に目を向けた。「ん?」と怪訝そうな表情の隆也に「開放されたねっ!」と私は笑顔を見せる。



「そういえば、隆也はなんでここ来たの?」
「あー・・・一緒に帰ろうと思って」
「一緒に帰ろうかー!じゃ、本借りてくる!ちょっと待ってて!」



隆也と一緒に帰れることになり、更に上機嫌になった私はお目当ての本がある場所へ向かった。ソコへ他には目もくれずに向かう。アイツの居場所はもう知ってるんだ!

あった、あった。大好きな作家さんが書いた野球少年のお話。凄く気になってたんだ。

ありがとうございましたー!と図書の先生にお礼を言って、煩くならない程度に急いで隆也のもとへと戻った。借りてきた本を見せると「また野球のかよ」と手に取ってページを捲る。



「野球はね、良いんだよ!」
「なにがだよ。本当に野球バカだな」
「隆也に言われたくないなあ」
「ほら、帰るぞ」
「部活ないと寂しいねー」
「ソレが野球バカなんだよ」



私は野球が好きだ。高校野球が好きだ。野球部のマネージャーが楽しくて、楽しくて仕方がない。

でも、ソレと同時に隆也の頑張ってる姿が同じグラウンドで見ていられるのが嬉しい。どの女の子よりも間近で見られる。これは彼女の特権でもあり、マネージャーの特権でもある。 野球をやっている隆也はかっこいいし(学ラン姿の隆也もかっこいいんだけどね!)、時々マネージャーとしての仕事が疎かになっちゃうけど(隆也の見すぎじゃないよ!ホント!違うよ!)私は隆也バカかもしれない。



「あ、そういえば。明日野球部全員で勉強会やっけど、も来るだろ?」
「うわー・・・勉強会?勉強しちゃうの?」
「勉強すんだよ。は頭良いから教える側だろうけど」
「田島くんと三橋くんは西広先生がやってくれるだろうから・・・面倒なとこは回ってこないな!」
「西広のサポートもしてやれよ」
「私が勉強嫌いなの知ってるでしょー?」



「そこで威張るな」とぺシッと頭を叩かれる。あまり力を入れないでくれてるのは隆也が優しいからだ。なのに、人間は痛くもないのに「痛い」という言葉が出てくる。 隆也には、もうお見通しだから「痛くねーくせに」といつも返ってくるんだ。だから、私もいつも笑って返す。



「じゃー私も勉強会行こっと」
「おー。来い。オレにも勉強教えてくれ」
「いいよ。でさ、どこでやんの?図書室がいいなー!」
「図書室って言ってたぞ、花井が」
「流石キャプテン!わかってる!」
「本読むなよ。はオレの隣に座ること、決定」
「隆也が決定しなくても、私の中でもう決定済みです!」



本読むなよ。という言葉はキレイに流して、私たちは自転車置き場へ向かった。繋いだ隆也の手はリラックスしているようで、暖かかった。私といるときは、緊張しないでほしいし! そういう私は隆也といるとき、ときどき緊張しちゃう、けど・・・。





影が重なった瞬間
 (明日、みんなちゃんと勉強するかな?)(するだろ。花井がいんだし)(・・・せっかく隆也と居れるのに)





071230 家長碧華
 タイトル提供:rain rain