「寒くなってきたねー」
「ホントだなー!風邪引くなよ?」
「大丈夫だよ。それより誠二のが心配だな。ちゃんと布団に入って寝てる?お腹出してちゃだめだよ?」



一度が寮のオレの部屋にいきなり来たとき、お腹を出して寝ていたらしい(起きたときはちゃんとタオルケットがかかっていた。がかけてくれたみたい)ソレ以来よく「お腹はちゃんとしまって」と言うようになった。 なんかお母さんみたいだ。それに・・・出して寝ているつもりはない!出てる!いつの間にか!!



「寒いのに雪降らないね?」
「そうだな。息はもう白いのに」
「雪が降ればいいのに」
「そんな口尖らせんなよ。いつか降るだろ」



空を見上げて口を尖らせて文句を言う。そんなに雪がすきだったんだろうか?去年の冬は「寒い」と連呼し「春よ、はやく来て!」と言っていた記憶がなぜか鮮明にある。それには冬よりも夏の方がすきだ。 明るく活発なには夏の方が似合う。

オレも夏がすきだ。1年の中でイチバンすきだ。サッカーがイチバン楽しい季節で、といるのがイチバンすきな季節だから。オレ的には、夏よ、はやく来い!

その次に冬がすき。が「寒いよー」といって、くっついてきてくれるから。サッカーは、あっちーなー!!って言いながらやりたいから冬はちょっとつまんない。でも、冬にしか出来ない雪中サッカーは楽しい! すっげー足腰疲れるけど、楽しい!だってパスしたってへんなとこで飛び跳ねるし、ドリブルが上手くいかねーし、足埋まるし!



「寒いからはやく帰ろうよ」
「おーそうだな。今日さ、来るんだろ、こっち」
「行くー!で、あったまりたい」
「そっちさみいのか?」
「んーん。あったかいよ?私は誠二にあっためてもらいたいわけですよ」



ニヒッと笑う。今年はストレートな言葉できたぞ!!ほら、こういう可愛いが冬はたくさん見れるからすきなんだ。は一年中可愛いけどね!特にってこと!!

こんなストレートでこられちゃ、オレの頭が嬉しさでパンクしてしまいそうだ。今すぐにでもぎゅっと抱きしめたい。きっと抱きしめれば、恥ずかしがりながらも抱き返してくれるんだ。 でも、は外で抱きしめられるのをいやがる。前にぎゅってしたのを友達に見られたからだ。きっと、そうだ。だからオレは外では我慢してんだ。・・・実際にからそう聞いたわけじゃないけど、ほら!KYな彼氏はいやだろ!うん。オレは空気が読める男だー!!



「寮がくっついてればいいのになー。そしたら、いつでも行ったり来たりできんのに」
「むしろ、同じ部屋がいいなー。なんかもう学校が認定してくれたカップルは同じ部屋とか!」
「ソレいいな!で、1年続けばランクアップーとか基準あれば面白そうじゃない?」
「いいね、ソレ!私たちきっと一番ランク良いやつになれるよ」



今、本当に思いつきで言ったことが本当に羨ましくなってきて、でも現実的には全くありえなくて、切なくなるんだろうなー寮に帰ったら。だから、せめて一緒にいられるこういう時間を大切にしようと思う。

今日、を寮に帰せなかったらごめんなさい!誰に謝ってんのかオレにもわかんないけど、なんか「ごめんなさい」って言っておけば少しでも心が軽くなる気がして!気休めだ、気休め。



「じゃ、誠二、そっち行くとき電話するね」
「おう!待ってる」
「じゃ、いったんばいばーい」



笑顔で手を振るの手はまだ冷たかった。外で手を振ったら余計冷たくなるだろう。後で会ったら真っ先にの手を握って温かさを確かめてやろう。ポケットに両手をつっこんで、軽い足取りでオレも寮へ戻った。





今宵、あなたを攫いに行きます
 (ホントに手放したくないものってあるんだな)





080210 家長碧華
(BUMP OF CHICKEN/スノースマイル/凛さんリク)
 タイトル提供:MISCHIEVOUS